【猫の思想】ツンデレ
今日は太陽さんと会えなさそうだ。
「あの辺にいるのは分かるのににゃあ。」
それにしても、この暖かくなってきた日のひんやりする風の気持ち良さといったら、またたびの次くらいだ。
今日の朝はなんと穏やかなのだろう。いつも慌ただしく起きてくるあの人間が起きてこない。何日かに一回ほどこういう日があるが、なんだか最近はかなりの頻度で人間がお家にいる。お外に行かなくていい理由ができたのかな。
「朝がゆっくり過ごせるからいいか。」
ひねもす、この人間がお家にいるとちょっぴり嬉しいことは、人間には悟られにゃいようにしないとな。頭の意図していることに逆らって、本能が甘えるように言ってくる。
「早く遊んでくれないかなあ。」
いかんいかん、かまってちゃんになってしまう。そんな僕はプライドが許さない。しかしながら、一度スイッチが入ってしまうと、赤い点を追いかけたくなってしまう。
あの赤い点は本当に魅力的だ。どれだけ追いかけても絶対に捕まえられない。絶対に捕まえた!と思って手の中を見る前に手の甲にいたりして、毎回悔しくなる。捕まえられそうで捕まえられない。だけど、あれを追いかけている間は、とっても楽しいのだ。
「あの点を捕まえられたら、友達に自慢するぞ。」
そうそう、友達の紹介がまだだったな。僕は家を自由に出入りできるから、人間がいない日のお昼に公園へ出かける。そこで集会の始まりだ。黒いやつと青がかって端正なやつ、真っ白なやつ、三色混ざった面白い柄のやつとまだまだあげたら両手で数えられない。
集会では色々な話をするが、先生と呼ばれていたやつがみんなに色々なことを教えるのが基本だ。僕もそこで学んで、このようにある程度の言葉を習得するようになった。どうやら、人間にはうまく伝わらないのだが。
「発音が悪いのかなあ。」
名前をもらっている奴もいる見たいだ。僕にもかっこいい名前があるといいのだが、人間にはにゃあと呼ばれるだけで、それが名前と言うのならパンチを10発食らわせてやる。にゃあは、僕らが子供の時に唯一喋られる言葉だ。幼稚なイメージでしかない。
「にゃあ?どこにいるの?」
やれやれ、呼ばれたしいくか。重い腰を上げて声のする方へ行く。向かう時点で内心ワクワクが止まらないが、あくまで冷静に。急足にならないように。
「別に呼ばれたからちょっと顔覗きに来ただけだからな。」
ここでは正直言おう、もうすでにスイッチオンなのだ!
「あぁ、抱っこして、もふもふして、たくさん遊んでくれい。」
では、遊んでくる。
「手ぶくろ〜!」