おにたろう日記

医学生の徒然なる日記blog

【猫の思想】朝起きて

 朝は慌ただしい。太陽が顔を出している最中、僕は伸びをし、大きなあくびをした。その延長で、ため息を一つついた。こんなに優雅な時間は一日を通しても少ないのに、それを毎回ぶち壊してくれる邪魔が入るからだ。そしてまたため息をつく。

 「ほーら、また始まった、大きな足音で降りてくる。」

と心でつぶやきながら、段ボールで爪を研ぐ。別にストレスを感じているわけではない。なんとなく本能が爪を研げというのだ。

 以前は一緒にご飯を食べていたが、最近はある時間になれば勝手に僕のご飯が出てくるし、人間の方は朝は食べなくなっていた。お水も自動で流れているから好きなタイミングで美味しいお水を飲めている。不自由は一切ない。

「今日も頭の毛がぐちゃぐちゃにゃ。」

 いったい何に追われているのか、全く理解ができない。こんなに清々しい朝の時間を楽しめないのはかわいそうだ。と考えているのも束の間、せいぜい10分で家から出ていく。と思いきや、急に帰ってきては、また出ていく。

「あ、いつも持っている黒い物体を忘れたんだな。」

 人間を観察していると本当に面白い。喜怒哀楽が目に見えて分かる。光る大きな板を見ては、時に笑い、時に泣き、先ほどの黒い物体を耳に当てては怒って大きな声をあげたり、目の前に誰もいないのに謝って頭を下げたりしている。

「いったいあの黒い物体で何をしているんだろう。」

 そういえば、この前はあの黒い物体が大きな声を出して叫び出したからびっくりして、足が伸びきって急に飛んでしまったではないか。あのせいでしばらく腰が痛かったなあ。それから、たまにあの黒い物体は魔法を使ってその板に僕の見ている風景と同じ風景を止めて写してくれる。一緒に住む人間がよく僕に黒い物体を近づけては、ニヤニヤしていたり、なんや勝手にポーズが違うだので試行錯誤している。

「僕はお前のおもちゃやないで。」

全くやれやれだ。人間の使っているものに関わるとろくなことがない。

 以前にも大変な目にあったことがあった。あの丸くて大きな声を出して、床をはって進んで最後には同じところに戻っていくあの物体だ。はじめて家に置かれた日に急に動き出して、逃げても追ってくるから正直やられると思った。

「僕の方が先にこの家にいたんだからな。」

恥ずかしながら、あの物体に胸を張って叫んだことがある。しかし、和解が成立してからはあいつの上に座ると自動で散歩できるからあれはあれで楽しい。それから、急にピンポーンってなるあの機械はなんなんだ。不定期であいつらは鳴いているけどいったいなんのために人間は使っているのだ。

 あくびが止まらない。人間も家の外で寝ているのだろうか。まだ太陽さんが登り切っていないからもうしばらく寝るとするかな。